YouTubeを開けば「中国に行ったら終わり」、Xを見れば「日本人は拘束される」、まとめ記事には「スパイ容疑で捕まった日本人が続出」——。
中国旅行について調べようとすると、この手の情報が本当にたくさん出てきます😨
私は中国に住んで3年以上になります。広州に約3年、2026年の夏からは深圳に暮らしています。その立場から、はっきり言わせてください。
普通に旅行している人が拘束されることは、まずありません。
私自身、3年以上住んでいて一度もそんな目に遭ったことはないですし、周りの日本人からもそういう話は聞きません。
ただ、「大丈夫ですよ!」と言うだけでは何の説得力もないと思います。この記事では、実際の数字と公的な資料を確認したうえで、「なぜそう言えるのか」を一つずつ整理していきます。あわせて、旅行者が本当に気をつけるべきポイントも、逃げずに書きます📝
「日本人はスパイ容疑で拘束される」は本当か
いちばん多く見かける話から行きましょう。
まず事実を確認する
中国には反スパイ法(反間諜法)という法律があります。2014年に制定され、2023年4月には対象を広げる改正が行われました。この法律を根拠に日本人が拘束されている、というのは事実です。
日本経済新聞の報道によると、反スパイ法が施行された2014年11月以降に中国で拘束された日本人は17人。このうち9人がスパイ罪で実刑判決を受けています。中国側は、この9人について「報酬と引き換えに日本の情報機関に中国国内の情報を提供していた」と認定しています。
これは重い事実です。実際に長期間拘束され、人生を大きく狂わされた方が現実にいる。そこから目をそらすつもりはまったくありません。
でも「17人」という数字を、どう読むか
ここからが大事なところです。
反スパイ法の施行から11年間で17人。一方で、中国を訪れる日本人は、駐在員・出張者・観光客を合わせれば毎年数十万人規模です。コロナ前は、日本は韓国に次いで中国を訪れる外国人が多い国でした。2024年11月末にビザ免除措置が再開されてからは、その流れも明確に戻ってきています。
つまり、分母は「延べ数百万人規模」、分子は「11年で17人」です。
そして、その17人の内訳も報道で見ることができます。北海道大学の研究者、地質調査会社の社員、製薬会社の幹部社員、商社関係者——いずれも中国に駐在していた人、出張していた人、研究で長期滞在していた人です。
「観光で数日訪れた旅行者が拘束された」という報道は、私が調べた限り見当たりません。
中国当局が「摘発例」として公表しているもの
さらに具体的に見てみましょう。外務省の「安全対策基礎データ」には、中国国家安全部が自ら公表しているスパイ事案の摘発例が引用されています。
| 中国当局が公表している摘発例 |
|---|
| 外国人が、中国の国家機密を違法に外国に提供した |
| 外国人が、国家機密情報を含む大量の情報を収集した |
| 出会い系アプリで知り合った女性の依頼で、報酬を得るために中国軍艦の停泊地や出港の様子を撮影した |
| 軍用飛行場の施設や戦闘機の配置を何度も違法に撮影し、ネット上で公開した |
| 外国機関の指示で、自然保護区で野生植物の標本や種子を違法に採取し、海外に持ち出した |
| 観光を名目に自然保護区に複数回入り込み、大量の昆虫サンプルを採取して国外に持ち出した |
| 国家級湿地保護区や森林に検査機器を多数設置し、地理・気象・生物の機密データを違法に収集した |
いかがでしょうか。
一つとして「普通に観光していたら捕まった」という事例がありません。
軍艦を撮る。戦闘機の配置を撮ってネットに上げる。保護区に何度も入り込んでサンプルを持ち出す。検査機器を設置してデータを取る。——これ、日本でやっても普通に問題になる行為ですよね😅
私がずっと感じているのはここです。中国当局が、怪しいところが何もない外国人を、無理やり理由をつけて捕まえるということは、ほぼありません。 拘束されている人には、当局から見て「何か引っかかる要素」がある。そこがスタート地点なんです。
では旅行者は何に気をつければいいのか
とはいえ、法律の存在自体は事実なので、「絶対に触れてはいけないライン」は知っておいて損はありません。外務省の資料をもとに整理すると、こうなります。
| やってはいけないこと | 旅行者との関係 |
|---|---|
| 「軍事禁区」「軍事管理区」の表示がある場所への立ち入り・撮影 | 標識があるので普通は近づかない |
| 軍事施設・軍人・軍用機・軍艦の撮影 | 観光ルートに存在しない |
| 空港・港・鉄道の保安検査エリアの撮影 | これは要注意 ⚠️ |
| GPSを使った測量、地質・生態・考古学調査 | 一般旅行者には無縁 |
| 無許可のアンケート調査・統計調査 | 一般旅行者には無縁 |
| 国家機密に該当する情報の取得・保有 | 一般旅行者には無縁 |
見ていただくと分かる通り、旅行者が「うっかり」踏みそうなのは、実質的に保安検査エリアの撮影くらいです。
地下鉄の手荷物検査機や空港のセキュリティを面白がって撮らない。これさえ守っておけば大丈夫です。街並み、料理、地下鉄の車内、観光地、夜景——普通の写真は全部自由に撮れます📸
💡 逮捕まで行かなくても、「撮影データを消してください」とその場で言われる事例はあります。素直に消せばそれで終わりです。粘ったり言い返したりしないのがいちばん賢いです。
「日本人だとバレたら狙われる」は本当か
2つ目の不安がこれだと思います。ここも正直に書きます。
起きた事件から逃げない
2024年、中国国内で日本人が襲われる痛ましい事件が実際に起きました。6月には江蘇省蘇州で日本人学校のスクールバス停で母子が刃物で襲われ、制止に入った中国人スタッフの方が亡くなりました。9月には広東省深圳で、日本人学校に通う小学生の男の子が登校中に襲われ、亡くなっています。
これは「無かったこと」にできません。中国に住む日本人として、私も強い衝撃を受けました。
そして、こうしたニュースがあると「今、日本人が中国に行くのは危ないんじゃないか」という空気が一気に広がる。その気持ちは、すごくよく分かります。
その上で、日常の実感を書きます
ここから先は、私が3年以上ここで暮らして感じていることです。
そもそも、日本人であることは、街を歩いているだけではバレません。
理由は単純で、私たちはアジア人だからです。
私は街中でよく、お店の人に「你是哪里人?(あなたどこの人?)」と聞かれます。私の中国語がそんなに上手じゃないので、訛りが引っかかるんですね。そこで「どこだと思う?」と聞き返すと、返ってくる答えがこれです。
- 「内モンゴルの人?」
- 「新疆(ウイグル)の人?」
- 「韓国人でしょ?」
そもそも中国人だと思われていて、外国人だと分かった時点で初めて驚かれる、というのが日常です。しかも圧倒的に多いのが「韓国人でしょ?」😂
面白いのが、私は日本にいるときに「韓国人みたいだね」なんて言われたことは一度もないし、他の国に行ってもそう言われたことがない。中国でだけ、なぜか韓国人だと思われるんです。
日本語を話していてもバレないことが多い
「でも日本語を話したらバレるでしょ?」と思いますよね。
私は日常的に日本語を話しています。YouTubeの撮影もしていますし、日本人の友人と歩いていれば当然日本語です。それでも「韓国人でしょ?」と言われるんですよ。
つまり、周りにいる中国の人全員が「今の言語は日本語だ」と聞き分けているわけではないということです。もちろん、聞いてすぐ日本語だと分かる人も当然いますが、全員がそうというわけではありません。
だから旅行者の視点で言えば、「日本人だとバレて狙われる」という前提でビクビクする必要は、ほとんどないというのが私の実感です。
数日の旅行で、あなたが「日本人だ」と認識される場面は、ホテルのチェックインでパスポートを出すときくらい。街を歩いている限り、あなたはただのアジア人観光客の一人です。
数字で見ると、中国と日本はどのくらい違うのか
感覚論だけだと平行線なので、客観的な指標も見てみましょう。
① 世界の治安指標では、日本と中国はほぼ横並び
生活コストや治安の統計サイトとして知られる Numbeo の Safety Index(2025年版) では、こうなっています。
| 順位 | 国 | Safety Index |
|---|---|---|
| 10位 | 🇯🇵 日本 | 77.1 |
| 15位 | 🇨🇳 中国 | 76.0 |
その差、わずか1.1ポイント。
もちろんこれは利用者アンケートに基づく体感指標なので、絶対的なものではありません。ただ、少なくとも「中国は日本と比べて桁違いに危険」という数字にはまったくなっていない、ということです。
② 外務省は中国本土に危険レベルを出していない
日本の外務省は、渡航先の危険度をレベル1(十分注意)〜レベル4(退避勧告)の4段階で示しています。
中国についてはどうかというと、新疆ウイグル自治区とチベット自治区にレベル1が出ているだけで、北京・上海・広州・深圳といった主要都市を含む中国本土の大部分には、危険レベルが設定されていません。
「事件が起きているのに、なぜレベルを上げないのか」という声に対して、外務省の担当課はメディアの取材にこう答えています。
事件が起きたのは事実ですが、邦人の方がその国で暮らしている中で、色を変える必要はないと考えました
判断は個別の事件や政治的背景ではなく、治安に関する総合的な状況を勘案して決定しているとのことです。
⚠️ 危険レベルは情勢によって変わります。渡航前には必ず外務省 海外安全ホームページで最新情報を確認してください。なお、危険レベルの基準は国ごとに違い、たとえば韓国政府は中国に対して日本とは異なる判断をしています。「世界共通の基準」があるわけではない、という点は知っておくと冷静に読めます。
「変な人」はどこの国にもいる
ここまで書いてきましたが、私は「中国は100%安全な楽園です」と言いたいわけではありません。
変な人は、どこの国にもいます。
運悪くそういう人に出くわせば、嫌な思いをすることはあるでしょう。それは中国でも起こり得ます。
でも、それは日本でも起こるんです。日本の繁華街で絡まれることも、電車で変な人に遭遇することも、残念ながらあります。
大事なのは、「中国だからそれが起こりやすい」ということはない、という点です。世界には確かに危険度が明らかに高い国や地域がありますが、中国と日本を並べたときに、旅行者が背負うリスクの差は、渡航をためらうほどのものではない——これが、実際に住んでいる私の結論です。
そして忘れてはいけないのが、中国には世界中から観光客が来ているという事実です。2025年に中国を訪れた外国人観光客は3517万人で、過去最高を記録しました。ヨーロッパからもアメリカからも東南アジアからも、普通に人が来て、普通に観光して、普通に帰っていっています。
むしろ私が実感しているのは「中国の人の親切さ」
ここは、いちばん書きたかったところです😊
私が中国で暮らしていて何度も経験しているのは、困っているときに、普通に助けてもらえるということです。
道が分からずスマホを見ながらウロウロしていたら、通りすがりの人が声をかけてくれる。店で何を頼んでいいか分からずに固まっていたら、隣の席の人が教えてくれる。手続きが分からずに窓口でまごついていたら、後ろに並んでいた人が代わりに説明してくれる。
そして印象的なのが、言葉が通じないときの態度です。
私の中国語が拙くて何を言っているか分からないとき、多くの人は面倒くさそうにするどころか、なんとか理解しようと一生懸命聞いてくれます。単語を言い換えてくれたり、スマホの翻訳を出してくれたり、身振り手振りを交えてくれたり。そういう経験を、私は本当に何度もしてきました。
政府と政府の関係が良いのか悪いのか、それは私が語ることではありません。ニュースを見れば、緊張している時期もあれば、そうでない時期もあります。
でも、その話と、あなたが中国の街で出会う一人ひとりの話は、まったくの別物です。
街の食堂のおばちゃんも、コンビニの店員さんも、地下鉄で隣に座った人も、国際情勢を背負って生きているわけではありません。目の前に困っている外国人がいれば、普通に助けてくれる。それが私の見てきた中国です。
人と人とのつながりは、みんなが思っているほど厳しいものではありません。
それでも旅行者が本当に気をつけるべきこと
過剰に怖がる必要はない、というのが結論ですが、「何も気をつけなくていい」わけではありません。本当に注意すべきポイントを整理しておきます。
① 交通事故 — これが実質的な最大のリスク🛵
拘束でもテロでもなく、日本人が中国でいちばん怪我をしやすいのは交通です。電動バイクは音がしないうえ、歩道を走り、逆走し、信号を見ていないことがあります。
青信号でも必ず左右を確認する。歩道で急に振り返らない。これだけで安全度が大きく変わります。
② 撮影してはいけないものを覚えておく📵
前述のとおりです。軍事施設、軍人、警察の車両、空港・駅の保安検査エリア、デモの現場。この5つだけ避けておけば十分です。
③ 政治的な話題に踏み込まない🤐
台湾・香港・新疆・チベット、そして歴史認識。こうした話題を街中や飲食店で大声で話したり、SNSで発信したりするのは避けましょう。これは「危険だから」というより、わざわざトラブルの種を撒く必要がないという話です。
④ もめ事に遭遇したら、その場を離れる🚶
万が一、揉めている場面に出くわしたり、絡まれたりしたら、言い返さない、動画を撮って煽らない、その場から離れる。これが最善です。日本国内でも同じですよね。
⑤ 備えておくべきこと📌
- 海外旅行保険への加入(中国の病院は前払いが基本で、外国人向けクリニックは診察だけで数万円かかります)
- 外務省の「たびレジ」に登録(現地の緊急情報がメールで届きます)
- 緊急連絡先をスマホにメモ(警察 110 / 救急 120 / 消防 119)
- 在中国日本国大使館・総領事館の番号を控えておく
まとめ
長くなったので、要点を整理します。
✅ 過剰に怖がらなくていい理由
- 反スパイ法での日本人拘束は11年間で17人。いずれも駐在・出張・研究など長期滞在者で、観光旅行者が拘束された報道は見当たらない
- 中国当局が公表している摘発例は、軍艦・軍用機の撮影や保護区でのサンプル持ち出しなど、日本でやっても問題になる行為ばかり
- 日本人であることは、街を歩いているだけではまずバレない(私は今でも「韓国人でしょ?」と言われます)
- 治安指標では日本と中国はほぼ横並び(Numbeo 2025:日本77.1/中国76.0)
- 外務省は中国本土の大部分に危険レベルを設定していない
⚠️ それでも気をつけること
- 交通(電動バイク)— 実質的に最大のリスク
- 軍事施設・保安検査エリアの撮影はしない
- 政治的な話題に踏み込まない
- 海外旅行保険とたびレジの登録
😊 そして、いちばん伝えたいこと
中国の人は、困っている人を普通に助けてくれます。言葉が通じなくても、なんとか分かろうとしてくれます。ネットで流れてくる「中国は危ない」という情報の何倍も、実際にここで起きているのは、ごく普通の親切なやりとりです。
不安になる情報ばかりが目に入る時代ですが、正しく知れば、中国旅行は必要以上に構えるものではありません。
ご飯はおいしいし、街は便利だし、地下鉄も高鉄もきれい。ぜひ、自分の目で確かめに来てください🇨🇳
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参考: 外務省「中華人民共和国(中国)安全対策基礎データ」/日本経済新聞「中国で拘束の邦人、半数が『日本の情報機関に協力』」(2025年7月)/Numbeo「Safety Index by Country 2025」/J-CAST ニュース(外務省への取材記事)。数値・危険情報は変動するため、渡航前に必ず外務省 海外安全ホームページで最新情報をご確認ください。
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