中国旅行の準備で、Alipayやビザ、地図アプリの話はよく出てきます。でも意外と抜け落ちているのが翻訳です🗣️
決済も地図も準備万端で中国に降り立って、レストランで紙のメニューを渡される。全部中国語。いつもの癖でGoogle翻訳を開く。カメラのアイコンをタップしても、画面がぐるぐる回ったまま何も起きない。
私は中国・深圳に住んでいますが、日本から来た友人がここで固まっているのを何度も見ました。
この記事では、2026年8月時点で中国国内から実際に使える翻訳の手段を、優先順位をつけて整理します。結論から言うと、多くの人はAlipayの中にある翻訳機能で足ります。そのうえで、圏外用の保険を1つだけ仕込んでおけば完璧です。

🚫 まず大前提 — 中国でGoogle翻訳は「開けない」
これは「精度が悪い」とか「遅い」という話ではありません。そもそも通信が届きません。
理由は2つあります。
理由① 中国版のGoogle翻訳は2022年に終了している
かつては中国国内向けに fanyi.google.cn という中国版が提供されていて、規制の外側で使えていました。Googleは2022年10月にこれを終了しました。「利用が少なかったため」というのが公式の説明です。
理由② 国際版はネット規制でブロックされている
残った国際版(translate.google.com とアプリ)は、他のGoogleサービスと同じく中国のネット規制の対象です。中国のWi-Fiや中国のSIMで繋いだ瞬間、アプリは通信できなくなります。

日本人は漢字が読めるので「なんとなく意味は分かるでしょ」と思われがちですが、これが落とし穴です。簡体字は日本の漢字とかなり形が違ううえに、「方便(=便利)」「小心(=注意)」のように意味がまるで違う単語が大量にあります。読める気がするのに読めない、が中国語のつらいところです。
✅ 結論 — 中国での翻訳は「3段構え」で用意する
いきなり全部入れる必要はありません。役割が違うので、この順番で用意してください。
| 段 | 使うもの | 役割 | 準備の手間 |
|---|---|---|---|
| 1段目 | Alipayの翻訳機能 | 現地でのメイン。文字・音声・カメラが全部入り | ゼロ(すでに入れている) |
| 2段目 | iPhone「翻訳」アプリ / Google翻訳のオフライン | 圏外・通信不調のときの保険 | 出発前に5分 |
| 3段目 | 百度翻译 / 有道翻译官 | カメラ翻訳を本気で使いたい人向け | 出発前に5分 |
1段目だけで済む人がほとんどです。ただし2段目は保険として必ず入れてください。理由は後で説明します。
🥇 本命 — Alipay(支付宝)の中に翻訳機能が入っている
意外と知られていないのですが、Alipayには翻訳ツールが内蔵されています。
2024年に、中国政府が進める「外国人が中国で不便なく過ごせるようにする」施策の一環として、Alipayが外国人ユーザー向けに16言語の翻訳サービスを追加しました。日本語ももちろん対象です。
何ができるのか
- テキスト翻訳 — 打ち込んだ日本語を中国語に、中国語を日本語に
- 音声翻訳 — 話しかけると翻訳してくれる。相手に喋ってもらってもOK
- 写真翻訳 — メニューや看板を撮ると、その場で日本語にしてくれる
つまりGoogle翻訳でやりたいことが、ほぼ全部入っています。
なぜこれが「本命」なのか
使い方
📱 iPhoneユーザーは標準の「翻訳」アプリを必ず仕込んでおく
ここからは保険の話です。
Alipayの翻訳はネットが要ります。ところが中国では、地下鉄のホーム、エレベーターの中、山の中の観光地など、あっさり圏外になる場所が普通にあります。ネットが死んだ瞬間に翻訳も死ぬ、という状態は避けたい。
そこでオフラインで動く翻訳を1つ持っておきます。iPhoneユーザーにとっての正解は、最初から入っている「翻訳」アプリです。
- Appleのサービスなのでネット規制の影響を受けない
- 言語データを落としておけば完全にオフラインで動く
- 会話モード(画面を上下に分けて交互に話す)が地味に優秀
- 新しくアプリを入れる必要がない
出発前にやっておく設定
🌐 Google翻訳は「オフライン専用機」として持っていく
「Google翻訳は使えない」と書きましたが、完全にゼロではありません。
Google翻訳にはオフライン翻訳という機能があり、言語データを事前にダウンロードしておけば、ネットに繋がっていなくても翻訳が動きます。これは中国のネット規制とは無関係に、端末の中だけで完結します。
Androidユーザーには特に重要です。iPhoneの「翻訳」アプリはAndroidには存在しないので、オフラインの保険はGoogle翻訳が担うことになります。
出発前の設定
オフラインで動くもの・動かないもの
| 機能 | 中国でのオフライン動作 |
|---|---|
| テキスト翻訳 | ⭕️ 動く(精度はオンライン版より落ちる) |
| カメラ翻訳(かざして読む) | 🔺 端末・言語によっては動く。要事前確認 |
| 音声・会話翻訳 | ❌ 動かない |
| 手書き入力 | ❌ 動かない |
| ウェブページ翻訳 | ❌ 動かない |

ちなみに地下鉄の駅や空港の案内表示は、中国語と英語が併記されていることがほとんどです。翻訳アプリが本当に要るのは、こういう公共施設ではなく個人商店のメニュー、商品のパッケージ、病院の受付といった場所です。
🇨🇳 中国製の翻訳アプリ — 百度翻译 と 有道翻译官
「カメラ翻訳をガンガン使いたい」「中国語圏に長く滞在する」という方には、中国製アプリが一段上の体験を提供します。
百度翻译(Baidu翻訳)
中国でいちばん使われている翻訳アプリです。日本のApp Storeからそのまま無料でダウンロードできます(App Storeの評価も4.7と高い)。
- カメラ翻訳が3モード — 撮影して翻訳、指でなぞった部分だけ翻訳、カメラをかざしてリアルタイムAR翻訳
- オフラインパック対応 — 日本語・英語・韓国語などを事前ダウンロード可能
- 日本語は「重点言語」として最適化されており、中日翻訳の精度が高い
有道翻译官(Youdao翻訳)
網易(NetEase)系の翻訳アプリで、こちらも日本のApp Storeから入手可能です。107言語対応で、写真翻訳のOCR(文字認識)が特に強いと評価されています。オフライン翻訳も日本語に対応しています。

💬 WeChat(微信)の中にも翻訳が入っている
WeChatを使う予定の方は、こちらも覚えておくと便利です。
① チャットのメッセージを翻訳する
中国語で送られてきたメッセージを長押し →「翻訳」をタップすると、その場で日本語になります。
さらに2025年3月からは、受信メッセージを自動で翻訳する設定が追加されました。「我(マイページ)→ 設定 → 一般 → 翻訳」から、翻訳先の言語を選んでおくと、1通ずつ長押しする手間がなくなります。
② ミニプログラム(ミニアプリ)の画面を翻訳する
これが地味に効きます。中国ではレストランの注文も、レンタサイクルも、チケット購入も、ミニプログラムの中で完結します。そしてその画面は当然、中国語です。
2024年10月から、WeChatにミニプログラム翻訳機能が追加されました。ミニプログラムを開いたときに画面右上に出る翻訳ボタンをタップすると、ページ全体が日本語を含む18言語に翻訳されます。
⚠️ 期待しないほうがいいもの
ネットの記事で「これがおすすめ」と紹介されていても、2026年8月時点では当てにできないものを正直に挙げておきます。
| サービス | 中国での状況 |
|---|---|
| Google翻訳(オンライン) | ❌ ブロック。中国版は2022年10月終了 |
| DeepL | 🔺 繋がる日と繋がらない日がある。回線やISPによって挙動が変わり、オフラインにも非対応。メインには据えられません |
| Microsoft翻訳 | 🔺 かつてはオフラインの定番でしたが、2025年6月のアップデートでオフライン言語パックとカメラ翻訳(OCR)が削除されたという報告が相次いでいます。以前ほど頼れません |
| 腾讯翻译君(Tencent翻訳) | ❌ 2025年3月13日にサービス終了。古い記事でおすすめされていることがあるので注意 |
| Papago(Naver) | 🔺 Naver系サービスは中国での接続が不安定という報告があり、賭けにはできません |
| ChatGPT / Gemini | ❌ 中国からは接続不可。翻訳目的での利用は不可能と考えてください |
| LINEの翻訳bot | ❌ そもそもLINE自体が規制対象です |
🎯 シーン別 — 私ならこう使う
深圳で暮らしていて、実際にどう使い分けているかをそのまま書きます。
🍜 レストランの紙メニュー・伝票
カメラ翻訳の出番です。Alipayの翻訳を開いて、メニューを撮る。これが一番速い。

ただし料理名は直訳されると意味不明になります。「夫妻肺片」が「夫婦の肺のスライス」と出てきて絶望する、みたいなことが起きます。料理名は翻訳より写真を見て選ぶか、大衆点評で他の人が何を頼んでいるか見るほうが確実です。
なお最近の中国のレストランは、QRコードを読み込んでスマホで注文する方式が主流になっています。この場合はミニプログラムの画面なので、WeChatやAlipayの内蔵翻訳のほうが相性がいいです。
🗣️ 店員さん・タクシー運転手との会話
音声翻訳よりも、テキストを打って画面を見せるほうが速いです。
音声翻訳は、周りがうるさいとまず認識してくれません。中国の食堂や市場は本当にうるさいです。あらかじめ「これを持ち帰りにしてください」「辛くしないでください」のようなよく使うフレーズを打ち込んでおいて、画面を見せる。これが実戦での正解です。
💊 薬局・病院
ここだけは絶対に翻訳の精度を優先してください。症状や薬の名前を間違えると洒落になりません。
私のおすすめは、日本にいるうちに「持病」「アレルギー」「常用している薬」を中国語に翻訳して、スマホのメモアプリに保存しておくことです。オフラインでも見られるし、いざというときに落ち着いて見せられます。
🏪 商品のパッケージ・成分表示
カメラ翻訳が最も活きる場面です。辛さの表示、消費期限、アレルギー成分など、読めないと困るものが多い。ここは百度翻译のAR翻訳(かざすだけでリアルタイムに置き換わる)が本領を発揮します。
🧳 渡航前チェックリスト
出発前、日本のWi-Fi環境でこれだけやっておいてください。5分で終わります。
- ☑️ Alipayを入れて、日本のクレジットカードを登録済みにする(翻訳はここに入っています)
- ☑️ iPhoneなら「翻訳」アプリで中国語(簡体字)と日本語をダウンロード+オンデバイスモードをオン
- ☑️ AndroidならGoogle翻訳で中国語(簡体)と日本語のオフラインデータをダウンロード
- ☑️ 機内モードにして、実際に翻訳が動くか確認する(これをやらない人が多い)
- ☑️ 持病・アレルギー・常用薬の中国語訳をメモアプリに保存
- ☑️ カメラ翻訳を本気で使うなら、百度翻译または有道翻译官をインストール(iPhoneのみ)
❓ よくある質問
Q. VPNを繋げばGoogle翻訳は使えますか? A. 使えます。ただしVPN経由なので遅く、接続が切れた瞬間に翻訳も止まります。メニューを目の前にして「VPNが繋がらない」と格闘するのは避けたいところ。VPNはLINEやInstagramのために用意して、翻訳は中国国内で完結する手段を別に持つのが正解です。
Q. ポケトークなどの翻訳機は中国で使えますか? A. ポケトークの公式サイトでは中国もグローバル通信の対応地域に含まれています。ただし「各国の情勢や通信環境によって利用できない場合がある」と注記されています。持っていくのは構いませんが、これ一本に賭けるのは危険です。スマホ側の準備は必ずしておいてください。
Q. 中国語をキーボードで入力できません。 A. 日本語キーボードで「しんせん」と打っても「深圳」は出ません。この記事や旅行サイトから中国語をコピー&ペーストするのが最速です。あるいは日本語で打って翻訳アプリに中国語に変換させれば、入力する必要はありません。
Q. 翻訳した画面を見せても失礼になりませんか? A. まったく問題ありません。中国の店員さんはこの見せ方に完全に慣れています。むしろ通じない中国語で頑張られるより、画面を見せてもらったほうが早いと思われています。
Q. 無料で足りますか? A. 足ります。この記事で紹介したものはすべて無料の範囲で完結します。課金が必要な場面は旅行レベルでは出てきません。
Q. 深圳や上海なら英語が通じるのでは? A. ホテルのフロントや空港、大型ショッピングモールなら通じることもあります。ただし街の食堂、タクシー、スーパー、病院では基本的に通じないと思ってください。都市の大きさと英語の通じやすさは、日本で想像するほど比例しません。
✅ まとめ
中国での翻訳まわりを、5行にまとめます🗣️
- 🚫 Google翻訳は中国では開けない。中国版は2022年10月に終了し、国際版はネット規制の対象
- 🥇 メインはAlipayの内蔵翻訳。文字・音声・カメラが全部入りで、新しくアプリを入れる必要がない
- 📱 保険としてオフライン翻訳を1つ。iPhoneは標準の「翻訳」アプリ、AndroidはGoogle翻訳のオフラインデータ
- 🇨🇳 カメラ翻訳を本気で使うなら百度翻译。日本のApp Storeから落とせる。ただしAndroidは非対応
- ⚠️ DeepL・Microsoft翻訳・腾讯翻译君は当てにしない。情報が古い記事に要注意
一番伝えたいのは、「日本を出る前に、機内モードで一度動作確認してほしい」ということです。翻訳アプリは、必要になる瞬間がだいたい「ネットが不安定なとき」「焦っているとき」です。そのときに初めて設定を触るのは、本当にしんどい。
準備は5分で終わります。出発前のチェックリストに、ぜひ一行足しておいてください😊
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画像クレジット: Wikimedia Commons — 深圳・華強北の歩行者天国: Mx. Granger (CC0) / 中国の商店の看板: User:Vmenkov (CC BY-SA 3.0) / 深圳地下鉄の駅構内案内図: MAWO 20SZ FWAHIU (CC0) / スーパーの商品陳列: Shwangtianyuan (CC BY-SA 4.0) / 中国の点菜単: 茅野ふたば (CC BY-SA 4.0)。写り込んだ人物の顔は編集部でぼかし処理を行っています。